明治150年―「維新」と「戊辰」のショ−タイム:ごちネット「ごちそうさま。」コミュニティβ版





 

 本来なら、寿(ことほ)ぐべきはずの「明治(維新)150年」なのだろうが、最近の「安倍一強」長州政権(官軍)は尾羽うち枯らす凋落ぶりである。片やわが「賊軍」の地に生を受けた若き英雄の活躍は目をみはるばかり。言わずと知れた大谷翔平の「二刀流」デビュ−である。こんな目まぐるしい日替わりシ−ンを見せつけられているうちに、これって逆説の「戊辰戦争」じゃないのかという妄想に取りつかれてしまった。一体、どうしたことか。米大リ−グでも大暴れした「ハマの大魔神」こと、元プロ野球選手の佐々木主浩さんの雄姿をふと、思い出したからである。

 

 戊辰(ぼしん)戦争に先立つことはるか大昔、東北・みちのくは敗者の第一歩をその地にしるすことになった。大和朝廷による「蝦夷(えぞ)征伐」である。その間、30年間に及ぶ抵抗戦争で一躍、勇名をはせたのが「アテルイ」である。宗教哲学者の中路正恒さんが“現代のアテルイ”に抜擢したのが、ハマの大魔神だった。中路さんは自著にこう書いている。「わたしは東北出身者の中からアテルイのモデルになるような人を探していた。そしてあるとき、当時プロ野球横浜ベイスタ−ズにいた佐々木主浩投手に思いいたった。佐々木投手も東北の出身(注;仙台)のはずだ。わたしは当時、『ハマの大魔神』の活躍に大いに歓喜していたのだった。わたしは、佐々木投手の今日の活躍に、アテルイのほんとうの姿を見る思いがする」(『古代東北と王権』)

 

 手放しの持ち上げようである。中路流に解釈すれば、アテルイ2世―佐々木投手の後継者が大谷二刀流ということになる。いや、アテルイが死闘を繰り広げた「胆沢の地」(現奥州市)の出身であることを考えると、大谷翔平こそがアテルイの“直系”と言えなくもない。「森友・加計」問題をめぐる公文書改ざん、“首相案件”なる怪しげな文書の出現、「なかった」はずの南ス−ダンやイラクの自衛隊日報の存在…。泣き面に蜂の相手方をあざ笑うかのように、わが「アテルイ3世」は打っては開幕からホ−ムラン3連発、投げては快刀乱麻の2連勝である。官軍(安倍城)の落城、いまや遅しと思いながら、翔平の”ショータイム”に留飲を下げる日々…。こんな光景が「維新」と「戊辰」を逆転させてしまったのか!?

 

 ふいに「ルサンチマン」という言葉が頭に浮かんだ。ウキペディアによると「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情の総量を指すらしい。蝦夷征伐から明治維新、そして現在に至るまでの、官軍に対するルサンチマンの圧倒量に我ながら驚いてしまう。その一方で、戊辰戦争で「奥羽越列藩同盟」を敗走させた「西郷どん」(NHK大河ドラマ)の人気はこのみちのくの地でも高まっているらしい。征韓論に敗れて下野した「セゴドン(西郷隆盛)」に対し、海の向こうから「テポドン」(北朝鮮が開発した弾道ミサイル)が発射されるのではないかと心配したが、現下の融和ム−ドの中でひとまず、この危機は脱したようである。

 

 薩長軍の指揮官だった西郷どんはその後の「西南の役」(西南戦争)で、新政府軍に盾突いた結果、賊軍に貶(おとし)められた。「官軍から賊軍」へ…この一本気が人気の秘密なのかもしれないが、ルサンチマンの背後からは「判官びいき」という鵺(ぬえ)みたいな言葉も頭をもたげる。「憎っくき西郷どんを許してしまう」―この心性こそが敗北の歴史を重ねてきた東北人の悲しい性(さが)であり、優しさだと思うことにしよう。「賊軍の子孫」を自認する俳優の菅原文太さん(故人)と作家の半藤一利さんが対談集『仁義なき幕末維新』の中で、歯に衣(きぬ)着せない「維新批判」(薩長史観)を展開している。

 

 佐々木投手と同じ仙台出身の文太さんがぼそっと、こんなことを言う。「あれほど薩摩と長州を嫌っていたのに、日露戦争でも何でも、戦地に送られた日本兵は文句も言わずに死んでいきましたよね。東北の部隊なんて大勢戦死してますよ。薩長史観でもって賊軍のレッテルを貼られながら生き延びた人たちでも、口をつぐんで恨みごとは一切言わないです。何も維新に限った話ではなく、その後もずっと今にいたるまで、上司やボスに利用されて棄てられても恨みごとは言わない」(同上書)。そういえば、文書改ざんをめぐる証人喚問で、体を張って「お上」を守った前国税庁長官もみちのくは福島の出だったなあ。あ〜ぁ、いまなお続く”人身御供”(ひとみごくう)。「会津っぽ」は今いずこに―。

 

 「弾丸(たま)はまだ、残っとるがよう」―。ふと、あの名セリフが口元に浮かんだ東映の仁侠映画「仁義なき戦い」の中で、文太さんが放った決めゼリフである。アテルイ3世よ、遠慮は無用ぜよ。何発でもぶち込んでくれんかのう。安倍城が陥落するまで………。かたわらのテレビは財務省トップの”セクハラ”疑惑でてんやわんやである。と思っていたら、この人も辞任。一抜けた、二抜けた…この国の底抜けた!?

 

 

(写真は「戊辰戦争」の戦闘場面=インタ−ネット上に公開の写真から)

 

 

 




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